赤い鳥「竹田の子守唄」と「部落解放同盟」(2)

子守唄とは
 これから、「竹田の子守唄」の元歌を導入聞いてもらいます。これは、竹田の皆さんにいただいたテープイすが、私たちが知っている赤い鳥の歌とはずいぶん違い、さらにリアリティのあるものです。これを導入部分にして、日本の子守唄は何なのかお話したいと思います。
 いま竹田で発見されている元歌は二つあります。元歌としての「竹田の子守唄」と、「竹田こいこい節」です。年代も少し違い、一番古いだろうと言われているのは元歌のほうです。

この子よう泣く 守りせというたか
泣かぬ子でさえ 守りゃいやや どしたいこうりゃ きこえたか   
この子よう泣く 守りをばいじる
守りも一日 やせるやら どしたいこうりゃ きこえたか
来いよ来いよと こまもの売りに
来たら見もする買いもする どしたいこうりゃ きこえたか
寺の坊さん 根性が悪い
守り子いなして 門しめる どしたいこうりゃ きこえたか
久世の大根めし 吉祥の菜めし 
まだも 竹田のもんばめし どしたいこうりゃ きこえたか
盆が来たかて 正月が来たとて
なんぎな親もちゃ うれしない どしたいうこりゃ きこえたか
「ねんねーんころりよ?」で知られる「江戸の子守唄」は、江戸時代の後期に日本全国に広まった歌のようですが、今聴いてもらいました、くどき歌、なげき歌といった内容の子守唄(正しくは、守り子唄)は、江戸末期から明治時代にかけてたくさん作られ、昭和の大戦が終わるあたりで役目を終えた歌のようです。「竹田の子守唄」も、その中の一つ、というわけです。
 北原白秋が集めた全国の子守唄の全集を見ても、「江戸の子守唄」のように赤ん坊にうたいかける優しい歌もたくさんありますが、この赤ん坊を殺したいぐらいつらい、というメッセージ・ソングがたくさんあります。これは守り子に出された当時の女の子たちの、特に貧しく差別を受けてきた子どもたちの、心象風景だろうと思います。
 次に、「竹田こいこい節」を聴いていただきます。これは、元唄より少し新しい世代の歌だそうです。ちょっと音が悪いのですが……。

新建(しんだち)新建と いばるな新建
広い新建に寺がない こいこい
ねんねんころりよ 寝た子はかわい
起きてなく子は つらにくい こいこい
この子よう泣く もりをばいじる
守りも一日やせるやら こいこい
盆が来たとて 何うれしかろ
親もなければ 家もない こいこい
赤い鼻緒の じょじょはいて
竹田の岩公(いわこ)に
こうてもろた こいこい